光造形方式の3Dプリンターは、使い勝手もよく、簡単に造形物が作れるので、気が付くとあっという間に100時間くらい稼働しています。
100時間くらい稼働したあたりから、レジンタンク(VAT)の底のFEPフィルムに細かな傷や濁りがあることに気が付きます。
傷や濁りが出始めると、造形物の造形ミスがだんだんと見受けられるようになります。
ここまでくると、FEPフイルム交換しないといけなくなります。
参考までに弊所では、3Dプリンターの稼働時間を記録しており、今回FEPフィルムを交換しなければと決断したのは、大体120時間くらいでした。実際には、仕事の関係もあって160時間までだましだまし運用していました。
上右図の写真に示すようにかなり凹凸が見られるようになっています。ここまでくると、この部分では造形ミスが発生し易くなります。
では、FEPフィルム交換の手順を説明します。
まず、準備するものです。
新品のFEPフィルム。今回はSonicmini用ではなく、Wanhaoの物を使用しました。
次にヘキサレンチ2mmのものが必要です。また、力が結構必要になりますので、柄があるヘキサドライバーもあればいいと思います。今回は事務所にあったもので間に合わせています。
なお、交換してみてわかりましたが、ヘキサレンチの先端は切り落とし形状(面取りせずにまっすぐ切り落としたもの)がいいです。よくある面取りしてあるものだと、ねじとの間で滑ります。最悪舐めてしまう可能性があります。
早速、レジンタンク底面側のねじを外します。かなりきつく締めてあるので、ヘキサレンチでてこの原理で回した方が回しやすいと思います。
ねじをはずすとレジンタンク本体からアルミ製の金属枠が外れます。そして、レジンタンク本体から今まで使っていたFEPフィルムを外します。
なお、この際、未硬化のレジンが付着している場合があるので、念のため手袋を付けて取り外したほうがいいです。その後、アルコールでレジンタンク本体、金属枠を清掃します。
では、新しいFEPフィルムを取り付けていきましょう。
今回使用するWanhaoのFEPフィルムは厚みが0.15mmあります。
ちなみに初期取り付けていたFEPフィルムを測ってみたところ、0.15mmありました。
ということは、Z軸キャリブレーションでコピー紙(厚み0.1mm)を使用していたので、造形時に0.05mm分厚みをつぶして運用していたことになります。痛恨の極み。まぁ、レジンタンクにフィルムが付いた状態でフィルムの厚み図るにはマイクロメーターかハイトゲージでもないと測れないので、次回から気を付けましょう。
3Dプリンターを購入して初めて使う際には、念のため、レジンバットを付けてFEPフィルムにプラットフォームを合わせた状態でZ軸キャリブレーションを行ったほうがいいと思料いたします。
新品のFEPフィルムをレジンタンクの底面に配置し、その上から金属枠を載せて位置決めします。尚、新品のFEPフィルムは両面とも保護フィルムが貼ってあるので、剥がすのを忘れないでください。
位置合わせを行ったら、先のとがったもので、ねじ穴に穴を開けておきます。私の場合、一気にすべて開けるのではなく、ねじを取り付ける際に1か所ずつ穴開け、ねじ締めの要領でやりました。右上の写真のようにレジンタンクの枠の縦、横の中央部分のねじを先に軽く締めておきます。この際、ねじの締める順は対角になるように締めていきます。均一にフィルムに力が掛かるからです。この際、ねじは完全に締め付けないでください。軽く固定できればいいです。
残りの個所もレジンタンクの周方向に等間隔になるようにフィルムに穴を開けてねじを締めていきます。
全てのねじを取り付けたら、対角線を意識して、全てのねじを半周ずつ程度順番に締め付けていきます。最終的には、全てのねじが締めます。そうすると、レジンタンクの底面でFEPフィルムがパンパンに延ばされた状態になります。かるく指でたたくと太鼓の様に音が出るはずです。
切れ味のよいカッターでレジンタンクからはみ出たFEPフィルムを切り落とします。ケガに注意してください。
最後にFEPフィルムを張り替えたレジンタンクに水を貯めて15分~20分放置します。水が漏れてこなければ、FEPフィルムの交換は成功です。もし、水が漏れてくるようなら、もう一度ねじを外して金属枠をしっかりとレジンタンク本体に抑え込んでねじ締めを再度やり直してください。この工程をおろそかにすると、レジンタンクにレジンを入れて造形中に3Dプリンターの露光面や内部にレジンが漏れ出て大惨事になります。
FEPフィルムを交換しましたので、Z軸キャリブレーションを行います。今回交換したWanhaoのFEPフィルムは厚み0.15mmあります。コピー紙の厚みは0.1mmですので、コピー紙基準でZ軸キャリブレーションを行うと、造形時にプラットフォームがFEPフィルムを0.05mm分押しこむことになります。ということで、FEPフィルム基準でZ軸キャリブレーションを行います。Z軸キャリブレーションのやり方は前回のブログ記事を参照ください。今回は、下の写真のように3Dプリンターにレジンタンクを付けた状態で行いました。
以上で、レジンタンクのFEPフィルムの交換は終了です。
次回ブログは、模型をつくろうの記事を予定しています。その後にこれから実験予定ですが、水洗いレジンの反りがでにくい造形姿勢(造形角度)についての記事をアップする予定です。