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液槽光重合(光造形)法 その②

液槽光重合(光造形)法には、大別すると3つの方式があります。

1つ目は、前回のブログで説明したガルバノミラー方式、2つ目はDLP方式、3つ目はLCD方式です。

1.ガルバノミラー方式

 光源からのレーザー光をガルバノミラーを使用して造形領域内を走査することでプラットフォームの下面に造形物を造形する方法です。


2.DLP方式

 光源にプロジェクターを使用して透明フィルムに光を投影することにより、プラットフォームと透明フィルムとの間の光硬化性樹脂が硬化して造形物を造形する方法です。


3.LCD方式

 タンク底面に透明フィルムを配置し、その下方に液晶パネル(LCD)を配置しています。光源からの光を液晶パネルで選択的に透過することで、プラットフォーム底面に造形物を造形する方法です。


ガルバノミラー方式とDLP(LCD)方式との光投影の違い

 右の図はガルバノミラー方式における光源からの光の投影を模式的に図示したものです。光源からの光は高速で駆動するガルバノミラーにより反射されます。プラットフォーム底面に照射された光の照射点(右図の赤丸)は図のように黄色の経路に沿って一筆書きのように移動します。これにより、造形領域内をくまなく走査することが可能になります。

 また、光源からの光は極小のスポットで照射されるので、造形の精度が高いのが特徴です。


 次にDLP方式及びLCD方式は、右図に示すように造形領域をマス目状に区切り、その1つ1つに光を選択的に投影する(右図の黄色部分)ことで、このマス目に対応する領域の光硬化性樹脂を硬化させて造形します。

 このマス目1つ1つをボクセルといいます。

 縦のボクセルの数×横のボクセルの数を解像度といいます。

 ボクセルのサイズが小さければ小さいほど、高精度な造形が可能となります。


解像度とは?

 最近、フルHDテレビとか4K放送とか聞きませんか?

 あれは、映像における解像度を示しています。液晶パネルの画面をよーく見ると小さな四角(画素といいます)が並んでいます。この画素を縦に数千個、横に数千個、それぞれ並べています。縦と横にそれぞれ画素を並べた列を走査線といい、画面の縦横の細かさを示す目安になっています。この縦横の画素数を解像度と呼んでいます。

 具体的には、HDのディスプレイは、1280画素×768画素 全体で98万3040画素で構成されています。

フルHD(2K)のディスプレイは1920画素×1080画素 全体で207万3600画素で構成されています。1920画素がほぼ2000であることから2Kと呼ばれています。1Kは1000です。

4Kのディスプレイは3840画素×2160画素 全体で829万4400画素で構成されています。

 

 では、大きさの異なる造形領域に同じ画素数で光を投影した場合、造形精度はどうなるでしょうか?

同じ画素数でも造形領域が大きいと1画素(ボクセル)当たりの大きさが大きくなります。これに対して、造形領域が小さいと1画素(ボクセル)当たりの大きさが小さくなります。つまり、同じ画素数であっても造形領域の大きさが異なると解像度が異なることになります。

 

 光造形方式の3Dプリンターにおいて、どれくらい精細な造形物を出力できるかは、解像度と造形領域のサイズから決まってきます。

 例えば、LCD方式の場合、120mm×68mmの造形領域において1画素あたりの大きさを計算してみます。

1920画素×1080画素のHD液晶パネルを使用する場合

 120mm/1920画素=0.0625≒0.063mm

 68mm/1080画素=0.063mm

となります。したがって、1つの画素の大きさが63μmとなります。

 

 ちなみに同じ造形領域でも4K(3840画素×2160画素)の液晶パネルを使用した場合はどうでしょうか?

 120mm/3840画素=0.031mm

 68mm/2160画素=0.031mm

 1つの画素の大きさが31μmになります。

 

 つまり、同じ造形領域であれば、画素数が増えれば、それだけ画素の大きさが小さくなり、高精度な造形が可能になります。

 


 光造形方式の3Dプリンター、特にDLP方式、LCD方式を導入する際には、造形領域の大きさと解像度から造形可能な1画素の大きさを確認しておくことが必要です。

 また、以下のグラフはガルバノミラー方式、DLP方式、LCD方式の価格と造形精度との関係を模式的に表したものです。導入時の参考にしてみてください。

 

 次回は、DLP方式とLCD方式についてもう少し説明します。