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材料押出法について

材料押出法は、熱溶解積層ともよばれ、樹脂を熱して溶解し、それをノズルから吐出して溶解した樹脂を積層させて立体造形物を造形する方法です。

 熱溶解積層は、一般的にFDM(Fused Deposition Modeling)やFFM(Fused Filament Modeling)と呼ばれています。

 

材料押出法の基本構成

材料押出法の3Dプリンターの基本構成は、溶解した樹脂を吐出するためのノズルを備えた造形ヘッドと、樹脂を積層させた造形物を支持するベースプレートとからなります。

 一例として造形ヘッドはX軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されており、ベースプレートはZ軸方向に移動可能に構成されています。造形ヘッドをベースプレートに対してX軸方向及びY軸方向に相対移動させて、欲しい造形物の輪郭形状に倣って一筆書きのように樹脂をベースプレート上に吐出していきます。

 一層目の吐出が終わると、ベースプレートを樹脂一層分だけ、造形ヘッドから離れる方向(-Z軸方向)に移動させます。

 そして、造形ヘッドをベースプレートに対して相対移動させて2層目の吐出を行います。この際、2層目の溶解した樹脂を1層目の樹脂(ある程度冷却されています)の上に吐出することで樹脂を積層させて立体的な造形物を作成していきます。

 上記の構成では、造形ヘッドがX軸方向及びY軸方向に移動可能であり、ベースプレートがZ軸方向に移動可能な構成ですが、別の構成では、造形ヘッドがZ軸方向に移動可能であり、ベースプレートがX軸方向及びY軸方向に移動可能なものもあります。また、パラレルリンク機構という3本のアームの端部を上下動することで造形ヘッドを相対移動させるものもあります。

 

材料押出法の材料

 材料押出法では、フィラメントという樹脂の細い線材を溶かしながら吐出していきます。イメージとしてソフトクリームのように溶けた樹脂を押し出して積層していく感じです。

 材料押出法で使用可能な材料としては、ABS樹脂やPLA樹脂が主に使用されています。

 また、最近では、樹脂にとどまらず、複合材料、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)も使用されています。

 さらに、最近では、樹脂の代わりに、コンクリートやセメントを吐出させて建築物を建造する建築用3Dプリンターも登場してきています。

 

材料押出法の長所、短所

 長所

 材料押出法では、造形ヘッドをベースプレートに対して相対移動させる構成であるので、構成がシンプルです。そのため、デスクトップにおける小型機から工場などで使用する大型機まで各種サイズの広い範囲で使用されています。

 また、材料が比較的簡単に入手できることもメリットです。

 

 短所

 一方で、材料押出法では、溶解した樹脂を積層させて造形物を造形することから、積層させた樹脂の各層の間に、積層痕と呼ばれる痕が出来てしまいます。この積層痕が小さければ、目立つことがなく、表面がきれいになりますが、積層痕が大きいと表面が段々となり、表面が粗くなります。

 また、材料押出法は、溶解した樹脂を一筆書きの要領で造形していくことから、造形物の断面のサイズ(一つの層における造形ヘッドの移動軌跡)と積層させる層の数により造形時間と造形コストが増大します。

 材料押出法の短所である積層痕については、様々な企業が改善を試みています。

 

 右の写真は、株式会社久宝金属製作所様のFFM方式の3Dプリンター「Qholia(クホリア)」です。同社社長の古川多夢ご自身が開発を手掛けており、その精度と積層痕の目立たなさは世界でもトップレベルの機種です。

 

3Dプリンター「Qholia(クホリア)」の紹介ページ

http://q-ho.com/products/Qholia/Qholia.php

 

古川多夢様の3Dプリンター開発記事

http://3dcreators.jp/column/ms_06.shtml



材料押出法の将来性

 日本では、材料押出法の3Dプリンターを使用して大きなサイズの造形はあまり話題にはなりませんが、欧米等を中心に大型の造形物の造形が試みられており、例えば、人が乗れる大型のボートや、家や橋などの建築物、中東では図書館すら3Dプリンターで作ろうとしています。

 今後、材料押出法の3Dプリンターは、使用する材料が広がるにつれ、さらに普及していくものと考えられます。

 

3Dプリント住宅

https://sekapri.com/tag/3d%e3%83%97%e3%83%aa%e3%83%b3%e3%83%88%e4%bd%8f%e5%ae%85/

3D建築物

https://sekapri.com/%e5%bb%ba%e8%a8%ad/20191026-10036/

3Dプリントボート

https://sekapri.com/mold/20191012-9985/